最近よく聞く『FIRE』と、昔あった『ファイナンシャル・フリーダム(経済的自由)』、似ているようでなにか違う。ここ最近、違和感を感じます。

最近『FIRE』という相談が明らかに増えました。 

経済的自由を勝ち取り、人よりも早くリタイヤ生活に入ることを、最近では『FIRE』と呼んでいるようです。 

いろんな本や雑誌、テレビなどで見かけることが多くなった、この『FIRE』という言葉。

ですが、実は昔から似たような言葉がありました。それが、『ファイナンシャルフリーダム』。

しかし、最近のFIREは、この昔のファイナンシャルフリーダムとは、ちょっと意味合いが違ってきているようにも感じられます。 


本来『FIRE』も『ファイナンシャルフリーダム』も、言っていることは同じことのように思うのですが、なにかが違う。 

FIREと聞くと、仕事から完全に離れ、早くリタイヤするという印象が強いです。

ですが、ファイナンシャルフリーダムと聞くと、経済的自由を勝ち取って、「本当に自分のやりたかったこと、目指すものに、お金という束縛なしに時間と労力を使えるようになる。」。

つまりは、『自分達の人生の目標が、お金という束縛から切り離された状態のこと』だと感じていました。 


「お金のために仕事をする。」

「生活のためにお金を稼ぐ。」

私たちの生活の多くが、『お金』という存在の影響をとてつもなく大きく受けている。

そういった物とは、違う次元に行くこと、それがファイナンシャルフリーダムなのだと思っていました。 

ところが、最近では株式市場の高騰などの影響で、リタイヤするのに十分な資産を確保できた人がでてきて、「何かをしたい」よりも、「仕事を辞めたい」という気持ちで『FIRE』という合言葉を使い始めた。そんな気もしています。


資産が増えれば『FIRE』できる? 

最近の『FIRE』という考え方の基本となっているのは、トリニティ大学の研究にあった『4%ルール』がもとになっているようです。

株式などで運用しながら、資産額の4%を取り崩していけば、30年ぐらいたっても資産は枯渇しない、というのがこの4%ルールの意味とされています。


年間300万円ぐらいの生活なら、資産額にすると約7,500万円。

この7,500万円を株式と債券を50:50で運用する。これでもう収入がなくたって、一生安泰なのだと考えられている。

計算上は確かにそうなのかもしれない。

でも、本当に「そんな安易な発想で良いのだろうか?」と思うところはある。

そもそも、資産運用を計算通りにで行うことほど、ろくなことはない。

金融市場などの投資で扱う分野というのは、そもそもが『不確実性』の強い世界。先のことはわからないという事しかわかっていない、言わば、計算通りが通用しない世界だと感じています。

今までも、数々の知識人や金融機関関係者、経済学者、物理学者、数学者たちが投資の世界の計算に挑み、何人も失敗している。

有名なのは、LTCM(ロングターム・キャピタル・マネジメント)、ノーベル賞受賞者の経済学者などをそろえ、高度な金融工学理論を謳い文句に、鳴り物入りで投資の世界に入ってきたが、約5年で破綻。

また、成功した人として有名なのは、数学者のジェームズ・シモンズがいるけれど、シモンズにしたって、決して順風満帆だったわけではなく、危機的な状況を乗り越えてもきている。

そんな人たちよりも、知識も、能力も、劣っている凡人である我々が、投資という世界で、計算通りに生きて行けるなんて本当に考えているのだろうか?


早期リタイヤに必要なのは、『資産額』ではなく、『収入』という視点。

4%ルールでは、取り崩し額が資産額の4%というのがルールだそうです。

仮に運用資産の評価額が3割下落したら、資産額の7,500万円は5,250万円となり、その年の取り崩せる金額は、その4%だから年210万円。生活費年300万円で計算していたら明らかに足りないことになる。

他にも、私たちの人生何がおこなるかわからないことがある。それこそ計算通りにはなっていない。

大病を患って長期の入院をしたり、身内に不幸が起こって介護状態になるなどの、予定外の出費がかさむこともあるかもしれない。

そんな時、予定外に資産を取り崩してしまえば、その後の生活費はどうなるのだろうか。

当初の予定よりも少ない金額で、その後の人生を生きていくことになることが、ほぼ確定となる。


そもそも、資産を取り崩して生活するという考え方が根本からおかしいと思っている。

そこで『ファイナンシャルフリーダム』の考え方が重要になってくると思っている。

お金というものと、人生との関係が軽くなってくる時と言うのはどういう時なのか、『ファイナンシャルフリーダム』の考え方では、『資産が産み出す収入が、生活に必要なお金を上回ってきた時』と言っている。

取り崩すのではない、あくまでも『収入』をベースに物事を考える。

いかに『収入』を作るのか、そしてその『収入』が、労働と紐づいていないものであることが、『ファイナンシャルフリーダム』にとって重要なポイントだと理解している。


株式市場の高騰などの影響によって、『資産額』で物を考える人が増えているように感じています。

でも、株価は上がっても、配当収入などのインカムゲイン(現金収入)は、株価の上昇程高くなってはいない。

『ファイナンシャルフリーダム』的な発想でいえばこうなる。

人気の米国の株価指数S&P500をベースに考えれば、S&P500の配当利回りは現在(2021/11)1%以下。

年間300万円の現金収入をつくってリタイヤするために必要な資産額(S&P500インデックスファンドなど)は3億円超になる。

1億や2億ぐらいの資産額では、早期リタイヤにはまだまだ足りない。

当然、4%ルールでは早期リタイヤに妥当だと考えていた7,500万円よりもはるかに高い位置にある。


ただ、もし株価が暴落して、S&P500の配当利回りが4%ぐらいになってきたとしたら、その時は7,500万円もあれば早期リタイヤが可能になってくるのかもしれない。

実際リーマンショックのころは、S&P500の配当利回りは、3%を上回っていた。

そう考えると、好調に見える今の株式相場の環境は、リーマンショックがあったそのころ以上に、早期リタイヤが難しくなっていると言えなくもありません。


早期リタイヤに必要なものは、資産額ではなく収入。

そもそも、高齢者たちがリタイヤできているのは、多額の資産があるからではありません。

『年金』という非常に安定した収入があるからだという事を忘れてはいけません。


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