とある不動産会社の広告で・・・。
とある不動産会社のマンション販売の広告にこうありました。
「住宅は、頭金無しで購入するとお得」。だから先延ばしするより少しでも早く住宅は購入したほうがいいんですという論法でした。
頭金なしだと。
頭金0円、2,990万円のローンで購入した場合
35年返済だと、35年間の総支払額は、3,170万円。
対して、300万円の頭金を準備する場合。
頭金300万円、2,690万円のローンで購入した場合
30年返済(5年短く計算)だと、5年間の賃貸の家賃含めて支払総額3,610万円。
その内訳は、ローン総額2,830万円、頭金300万円、家賃480万円
結論として、頭金無しで購入した方のが総支払額は、440万円もお得になりますというものでした。
こういう書き方をされると、いますぐ頭金無しで買ったほうがお得じゃないかと見えてしまうものです。
しかしこの話は、そもそも「頭金なし」と「頭金あり」で比較する理由が、全くあっていない。
例えば、同じ物件を新築時と5年経過時で比較した場合、シミュレーションの「頭金あり」の方の購入金額は築5年経過後の中古価格としてシミュレーションをしなければいけないのではないでしょうか?
また、仮に同じ新築の物件でという話なのであれば、シミュレーションの最後の年の35年経過後は、「頭金なし」の方は築35年で、「頭金あり」の方は築30年の物件という差ができるはずですが、そこも無視されているように感じます。
そしてさらに、チラシに乗っている販売物件がマンションであることを考えると、『管理費』と『修繕積立金』の負担があるものですが、この話もシミュレーションの中に出てきていない。
ご存知の通り、賃貸の場合には『管理費』や『修繕積立金』としての費用がないことが多い。(実際には家賃に含まれていると考えられますが。)しかし、マンションを購入すると、毎月の家賃のように『管理費』と『修繕積立金』の負担があります。
その分まで計算に入れたとすると、「頭金なし」と「頭金あり」の440万円の差は、おそらくほとんどなくなることでしょう。物件によってはむしろ「頭金なし」の方のが支払総額は多くなる可能性も高いです。
じゃあ、戸建住宅の場合には?
「築35年と築30年の物件、どっちのほうがより長く住めるのだろうか」と考えてみれば、当然ながら築年数が小さい方ですよね。
若いときに買って、老後築35年になった時、どこかでリフォームもしくは建替えなんてことも考えるようになるかもしれない。
でも、老後に入る前までじっくりと頭金をためてから、新築として建てた場合には、終の棲家として利用できるのかもしれない。
結論としては、どっちが良い悪いではなく、『そもそも比べるようなことではない』という話なのではないでしょうか?
そもそも私達は、「買いたい」と考えているときには、理屈ではなく「ただ買える理由を探している」ものです。
人の購買心理とはそんなものです。数字やシミュレーションで考えて人は買う買わないを判断しているわけではなく、その時の気持ちで買う買わないを判断しています。
このようなシミュレーションの話というのは、ほとんどの場合、「買いたい」と思っている人に十分な「買える理由」を与えることによって、消費行動を促そうとしているわけです。
もっと言ってしまえば、お金に関しての数字のシミュレーションというのは、私達が思っているほど、大した意味はないものなのです。
『賃貸』と『持ち家』、資産形成アドバイザーとしての見解は?
『賃貸』か『持ち家』かと問われれば、結局「どっちもどっち」としか言いようがないと思っています。
資産形成アドバイザーとしては、とにかく『貯金をする』ということが最重要課題であると考えています。『賃貸』でも『持ち家』でも、どちらを選択するにせよ、とにかく今の時点でより多くの貯金ができる方を選ぶということが重要だということです。
毎月貯金ができることで、当然ですが資産が増えていく。さらに、その資産を複利で増やせるようになれば、より早い段階で十分な資産を作ることが可能になる。
著名投資家のウォーレン・バフェットは、今使ったお金は、将来大金になるお金だと表現したと言います。
できるだけ早く今すぐにでも貯金をはじめることが、後々の資産形成に大きく繋がってくると考えています。
『賃貸』か『持ち家』かの問題と貯金との話といえば、「賃貸派の方のが、貯金額が大きなる傾向がある」という話があります。
総務省の家計調査(https://www.stat.go.jp/data/sav/sokuhou/nen/pdf/2020_gai4.pdf)によると、二人以上世帯の住宅ローンのある世帯は、同じ二人以上世帯の住宅ローンがない世帯よりも貯蓄残高が少ないとなっています。
複利を活用できる者からすると、人生の早い段階での貯蓄スピードというのは、将来の貯金額に大きな差を与えることになりえます。90歳のウォーレン・バフェットも、今の10兆円の資産のうち9.5兆円は、60歳過ぎてから作られたものだとも言われています。
バフェットは、複利の力を上手に活用してきた代表例ですが、複利というのは後半に急激に伸びていくという性質があるため、できるだけ早い段階からたくさんの貯金ができるということは、それだけ後半の資産増加の伸びを大きくすることに繋がってくるわけです。
資産形成としての目線から言うならば、賃貸を選ぶにも、持ち家を選ぶにも、今の貯蓄のスピードが早くなる方をということになります。
統計的には賃貸派のほうが貯蓄スピードが早いようですが、中には持ち家の方が有利になることあるかもしれません。
例えば、住宅ローンを組んで持ち家になることで、月々の返済額が今の家賃よりも小さくなることで、毎月の貯金額が増えることもあるかもしれません。
または、自己所有の家があることが、生活の安心感に繋がり貯蓄スピードが上がるという人も、まれかもしれませんがいるかもしれません。
要するに、賃貸を選ぶか、持ち家を選ぶかはその人次第ということなのでしょう。とにかく、今の貯金額が少しでも増える選択肢を選ぶというのが、資産形成という視点からはいちばん大切なことなのだと考えています。
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