資産運用といえば、「長期・分散・積立投資」
資産運用といえば、「長期・分散・積立投資」。
一度投資を始めたらできるだけ長く保有し、投資先は分散して、毎月一定額の積立投資をする。今となっては、資産運用の常識とも言える話です。
積立NISAやiDeCoなど、国が用意した国民が資産形成をするための制度にも、この長期・分散・積立投資が活用されてもいる。
今では多くの人が実践していると思われる、インデックスファンド(インデックスに連動する投資信託)のドルコスト平均法(毎月一定額の積立)というのは、まさにこの長期・分散・積立投資という一つの投資戦略を、実践的に具現化したものと言えます。
確かに、長期・分散・積立投資という投資の始め方は、間違っていないと思っています。
「何もわからないなら、とりあえず長期・分散・積立投資で始めてみれば?」とアドバイスすることにもなんの疑問もありません。
投資の神様と言われる、あのウォーレン・バフェットでさえ、インデックスファンドへの長期投資は、一般的な投資家には有効だと言っています。
しかし、だからといってその長期・分散・積立投資が、一般的な投資家に、本当に実行が可能なのかどうかというと少し疑問がある。
おそらく、この『長期・分散・積立投資』というのは、思っている以上に実行が難しいのではないかと考えています。
長期・分散・積立投資という投資の考え方は、最近生まれたものではない。
私自身も、もうかれこれ投資を初めて15年超になりますが、そんな私でさえ投資を始めた最初のころから、投資を始めるなら『長期・分散・積立投資』が有効だという話はありました。
当然、インデックスファンドという考え方や商品もたくさんあったし、低コストのインデックスファンドと言われるETFだって、東京証券取引所に上場して、もう20年以上も経ちます。
投資信託への毎月積立に関しても、ぜんぜんマニアックな商品というわけではなく、私が投資を始めた15年ぐらい前には、すでに銀行窓口や当時は郵便局などでも取り扱いが始まっていました。
つまりは、『長期・分散・積立投資』という投資の考え方は、別に今に始まった話ではないというわけです。
しかし、実際にその『長期・分散・積立投資』という投資法を実践し、何十年も積立を続けてきたという人はどれだけいるのだろうか?
おそらく、それほどいないのではないかと思います。
考えてみればおかしな話です。『長期・分散・積立投資』が本当にただ有効というだけの話ならば、なぜ長年それを続けてきた人があまりいないのか。
もちろん、私が投資を始めたときも、投資信託を買っている人がとても珍しかったというわけでもないと思っています。私の両親や当時の職場の仲間の中でも投資信託を買っている人はそれなりにいました。
それなのになぜ、今もそれを続けているという人がそれほどいないのかとても不思議に感じます。
『長期・分散・積立投資』には、思っている以上に実行しにくい何かがあるのではと考えてしまいます。
『長期・分散・積立投資』は、シンプルだけど実際にはとてもむずかしい投資法なのだと思う。
『長期・分散・積立投資』は、とてもシンプルな投資戦略であるため、イメージがしやすくわかりやすい。投資について説明するのにも、とても簡単に話せる。
長期で投資をすることで、複利の効果が得られるため利益がでやすい。
分散しているので、リスクを一つのものに縛られることがない。
積立で投資タイミングを分散しているから、安くなっているときに買い逃がさないですむ。
確かに理屈としてはわかりやすくなっています。
しかし、実際の投資では、理論や理屈があっているかよりも、私達の持っている『感情』のほうが、はるかに大きな影響を及ぼすものです。
「頭でわかっていても、なかなか実行できない。」、これが投資の最大の難しさだと言えます。
だとすると、『長期・分散・積立投資』という投資の考え方には、感情的に障害となるものが存在しているのではないだろうか。
まず長期という考え方ですが、実は私達人間は、近視眼的に物事を判断する傾向があると行動経済学では言われています。
この時点で、本能的に長期投資というのは難しいことになります。
10年後よりも1年後。本当に10年後を見据えて資産形成を考えられるなら、なぜ貯金だけで資産形成ができないのか?
それは、10年後に使うお金より、今使うのお金のほうが、人間にとっては大切だと感じるからです。
資料で見せられて長期投資と言われれば、頭で理解できなくもない話です。ですが、私達の本能では長期投資というスタンスは向いていない。
今は将来を夢見て、いい気分で積立投資を始めたかもしれないけれど、来年になったら、もしかしたら来週には、その考え方が大きく変わってしまっているかもしれない。
では分散の考え方はどうだろうか?
例えば、分散投資の基本とも言えるインデックスファンドですが、今人気のS&P500という株価指数に連動するインデックスファンドで考えると。
S&P500のインデックスファンドが、もし30%の損失を出していたら。500万円投資したものが、350万円になってしまったと考えたらどうだろう。
おそらく『不安』になりますよね。
では、『不安』を感じる理由はなんなのだろう。
それは、「よくわからない」からです。S&P500と言われても、その中身も、その中身の本質的価値も、何もよくわからない(具体的に数字にできない)。
そんな状態で値下がりが始まれば、不安になるのも当然です。不安というのは、自分にはよくわからないこと、または、コントロールできていないと感じた時などに起こる感情です。
ところが、国内のディズニーランドを運営しているオリエンタルランドの株価が大きく下落したと聞いたらどうだろう。相変わらずいつでもたくさんの入場者はいるし、今後もそうなると思っている。自分で行っても楽しいし、また行きたいとも考えている。
おそらくそう思っている人にとっては、オリエンタルランドの値下がりは、それほど不安感はないかもしれない。少なくともS&P500の値下がりよりは軽く受け取れることと思う。
つまりは、値下がりしても保有し続けるためには、不安感をできるだけ除去できるようにしなければならない。ましてや積立のように買い増すとなればなおさらです。
一つの会社でも不確定要素はたくさんあるのに、その会社が500もあつまれば、もっと不確定要素は増えてくる。
分散すればするほど、中身がよくわからなくなる。
結果、内容がよくわからないものに投資をすることになり、つまりは値下がりしたときの不安が大きくなる。
積立投資についても同じようなことが言える。
積立を始めたときから、値が上がっていく局面では、積立投資に対してなんの不安も感じていないかもしれない。
けれど、もし積立を始めてからすぐ値下がりが始まったら、その後も毎月積立は継続できるだろうか?
「今買ったら下がると思っているものを買う。」これはなかなか厳しい現実です。
また、相場が上昇してく局面で毎月積立をしていけば、買値の平均価格は当たり前だけど、どんどん上がることになる。
その後、相場が急落した場合、買値の平均価格が上がっているために、意外と早く元本割れを起こすことがある。元本割れしている中、どんどん値下がりし、さらにそこから毎月積立てる。
これもなかなか厳しい現実ではないでしょうか。
それでも自信をもって、価値が日々下がっている資産を、何も考えず毎月積立することはできるのだろうか?
頭と心は違う。
結局言いたいことは、頭で理解してることと、心で感じていることは、全く違うということです。
理屈ではうまく説明できても、感情ではうまく処理できない。そいうことはたくさんある。
積立投資を長年実践したという人が、思っている以上に少ないのには、そういう理由があるのではないだろうか。
長期・分散・積立投資を実践するためには、理論よりも、自分の感情をコントロールできるぐらいの信念をもつ必要があるのではないだろうか。
ウォーレン・バフェットの投資法を真似ても、ウォーレン・バフェットのようにはなれない。そこには投資に対する哲学の違いがあるようです。
投資で成功するためには、理論や理屈、データといったものよりも、投資に向きあう「自分の心」を作ることが欠かせないと感じています。
信念、理念、哲学、そういったものがなければ、理論や理屈なんて、投資の現場においてはたいして重要なことではないのかもしれません。
投資を始める上で本当に学ぶべきことは、理論的な投資法や賢い投資の仕方、上手な投資先の選び方などではなく、投資に対する思想や哲学なのでないかと思います。
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